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【ウマ娘怪文書】パジャマに着替えて部屋に戻った時、既にカレンさんは布団の中だった。大きな人型の抱き枕を抱えて。


1: 名無しさん(仮) 2023/11/13(月)20:13:44

パジャマに着替えて部屋に戻った時、既にカレンさんは布団の中だった。大きな人型の抱き枕を抱えて。
手足のある抱き枕は別に珍しくもないけれど、それは中にマグネットでも仕込まれているかのようにしっかりとカレンさんを抱きしめていた。
枕の頭部に描かれた顔は、どことなく彼女のトレーナーをデフォルメしたようなイラストで……。
「カレンさん、それは……」
問いかけに抱きしめる抱き枕ごとごろりとこちらに向き直り、穏やかな表情でカレンさんは答える。
「トレ枕ですよ。知らないんですか?」
ふかふかふわふわを抱き、またそれに抱きしめられる彼女の姿は、ひどく羨ましく見えた。




2: 名無しさん(仮) 2023/11/13(月)20:13:59

質のいい睡眠はストレス軽減だけでなく、あらゆるクオリティオブライフを改善させていく。私にとって、寝具のことは調べずにはいられないものなの。
トレ枕。そう呼ばれる寝具は今、にわかに若いウマ娘の間で流行っているらしい。大手クッションメーカーがとある名家とのコラボで発表したそれは、瞬く間に人気商品となった。
特徴は完全オーダーメイドだということ。購入者の多くはウマ娘で、彼女たちのトレーナーに大きさなどを似せて作られるそう。信頼できるトレーナーに似た抱き枕に抱かれ眠りにつくと、トレーニング効果も高まるとか。
ネットで調べるほど出てくる眉唾の噂話たち。しかし試さずに否定するのもどうか思う。これは決してやましい気持ちからではなく、寝具を試してみたいという純粋な気持ちで、私は注文に至った。
幸いにも、学園の購買部HPからリンクがあり、生徒なら簡単に自身のトレーナーのデータなどを送信出来るので注文はスムーズに完了した。






3: 名無しさん(仮) 2023/11/13(月)20:14:11

届いた大きな箱からそれを取り出してベッドに寝転ばす。そっと横に添い寝してみれば、なるほど身長差なんかは正確に作られているようね。あの人は私より結構高いもの、いつも目線を合わせるのに見上げる必要があるから。
腕は可動式で、中にもしっかり低反発のクッション材が入っている。自由に曲げられるが、力を加えなければそのまま固まってくれる優秀さ。テストも兼ねて右腕を私の下を通し、左腕を私の体の上に乗せてみる。
ぱちり、と音を立てて私の背中側で抱き枕の両手がくっついた。私を抱きしめる形になったところで、私も抱き枕を本来の用途、抱きしめてみる。
顔部分にはデフォルメで描かれたあの人に似た顔が描かれていた。流石に、リアルな写真はまずいということだろうけど。でもまあ……これはこれで……。





4: 名無しさん(仮) 2023/11/13(月)20:14:35

休日、ショッピングモールの中にあるクッションメーカー直売店を訪れていた。既にそこではウマ娘の行列が出来ている。
ネット通販もいいけど、やはり自分で手触りを確認して中のクッション材を吟味したいというわけなのね、わかるわ。
並ぼうと近づいた時、行列の中に彼女の顔を見つけて反射的に隠れてしまった。まさか…オペラオー!?どうしてあなたがここに!?談笑している相手はドトウ!?
なるほど、そういうことね。オペラオー、あなたの走りの強さその秘訣。それがこの抱き枕による快眠だったということね。
赤面しながら大事そうにクッション材の入った紙袋を抱いて帰るオペラオーを見送ると、私は行列の最後尾に並んだ。
私は彼を完全再現した抱き枕で安眠に包まれて、あなたを倒してみせるわ、オペラオー。




5: 名無しさん(仮) 2023/11/13(月)20:14:49

寮に戻ると早速抱き枕の中のクッション材を詰め替えていく。中に詰めるのはふわふわと硬めのハイブリッド。カバー側に近い表面にはふわふわを、内部の芯には硬めのクッション材を詰めていく。
そして完成したあの人を抱きしめ、抱きしめられると……。ああ、いつか肩が触れたあの日、味わった感触。ふわふわの羽毛布団の中、私達二人は抱きしめあい、厳しい冬の寒さを乗り越えていくのね。
足を絡め、頭部のイラストに頬ずりする。私の首を抱くように回された彼の腕が、ちょうどいい具合に枕のように私の首を保持してくれている。
もう、これなしの眠りには戻れないかもしれない。ぎゅっと力を込めて抱きしめると、クッション材がまるで肉を抱きしめたように反発を返してくれた。この反発が心地いい。私は、天国のような眠りに落ちていく。




6: 名無しさん(仮) 2023/11/13(月)20:15:05

体が重い、気怠い。睡眠時間が二時間も少ないのだから当たり前よ。朝練メニューを終えて更衣室で制服に着替えると、ロッカーの鏡に映った自分のクマが深い目を見て溜息をつく。
あれから、抱き枕のおかげで私の睡眠はとても良いものになった。肌艶がよくなり、頭はスッキリと冴え渡り、活力が漲っていた。なのに……。
ある時、抱き枕の顔部分が汚れているのに気がついてしまった。おそらく私のよだれのせい。彼のイラストの口周りがシミになっている。それほど深い眠りに落ちていたということだけれども……。
それを漂白して洗濯し直そうと思ったのがいけなかった。シーツを干すのに失敗し、生乾きのままにしてしまった。
結局その日はシーツを乾燥機にかけることになり、私は久々に抱き枕なしでに寝ることとなり、このような寝不足コンディションというわけ。




7: 名無しさん(仮) 2023/11/13(月)20:15:19

眠い、眠い。どうにか授業を終えて、トレーナー室に向かう。今日は午後練は休みだったはずだから、トレーナーさんが来るまで仮眠室で寝させてもらおう。
トレーナー室に入ると、奥の仮眠室に向かう。眠気で船を漕ぐようにこくりこくりと頭を揺らしながら、仮眠室のドアノブを開くとそのままベッドに倒れ込んだ。
靴を気怠げに床に脱ぎ捨てて、目を閉じたままごろごろとだらしなくベッドの上で体勢を直す。こんな姿、あの人には見せられないけれども、眠いんだから仕方ない。
布団に潜り込むと、抱き枕の腕を自分の枕にして、その腕に抱かれる。私も抱き返す。足も絡める。いつもの安眠ポジション。
今日の抱き枕、彼のにおいがする。抱き枕が着ているジャージに顔をぐりぐりと押し付け、胸いっぱいにそれを吸い込んだ。おやすみなさい。




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