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【ウマ娘怪文書】あれは冬の寒空の下でトーセンジョーダンのトレーニングを見ていたときのことだ。コートのポケットで温めていた手を引き抜くときに引っ掛かりを覚え、ふと薬指を見ると爪の先が小さく欠けていた


1: 名無しさん(仮) 2023/12/16(土)19:17:17

あれは冬の寒空の下でトーセンジョーダンのトレーニングを見ていたときのことだ。コートのポケットで温めていた手を引き抜くときに引っ掛かりを覚え、ふと薬指を見ると爪の先が小さく欠けていた。クールダウンを終えて友人たちと談笑する彼女に声をかけて一足先にトレーナー室に戻ると、トレーニングの結果をまとめながら事務仕事を片付ける。書類の束を手に取ると、紙に爪が引っ掛かる。思わず頭をかくと、やはり引っ掛かる。こういうものは痛みこそないが、小さなストレスが積み重なってよろしくない。しかしトレーナー室に爪切りを置く習慣もなく、せめて気を紛らわそうと親指の腹で爪を擦って誤魔化していると、シャワーを浴びたトーセンジョーダンが戻ってきた。
「はー……もー寒さヤバくね? シャワーじゃ全然あったまんないっつーか……あれ、どったの? それ」
「これか? ちょっと爪が欠けたみたいで」
「ふーん、見して」
彼女にしては珍しくこちらの仕草を気にしていたのも、それが彼女にとって大事な爪のことだったからだろうか。




2: 名無しさん(仮) 2023/12/16(土)19:17:30

「うっわ! なにこれガッタガタじゃん。つーかいつもどうやってんの? まさか爪切りだけ?」
「一応切った後は適当にやすりを……」
「いや、これはありえんっしょ……まーいっか。やったげるから、指ぜんぶ出して」
仕事の手を止めると、言われるままに彼女に両手を差し出す。彼女はカバンからポーチを取り出して開くと、まるで工具箱のように整理された道具をいくつも並べていく。細い指でこちらの手を取ると、無言で唇を尖らせながら一枚ずつ丁寧に爪を整えていく。色々と気が散りやすく、レースへの気持ちも揺らぎがちだった彼女だが、爪のことに関しては話すときも手入れをするときもいつも真剣だった。
静かなトレーナー室にエアコンの音とやすりがけの音だけが響く。窓の外はすっかり暗くなり、まだトレーニングを続ける生徒たちの掛け声が聞こえてくる。予報では明日以降は冷え込みが厳しくなるそうだ。明日は温かい飲み物でも用意してやろう、そう思いながら穏やかな時間に身を委ねた。






3: 名無しさん(仮) 2023/12/16(土)19:17:56

そんな二十年ほど前の些細な出来事を突然思い出したのは、やはり冬の日のことだ。トレーナー室に戻ってマフラーを解くときに引っ掛かりを覚え、ふと中指を見ると爪の先が小さく欠けていた。家に帰るまでの我慢だなと気持ちを切り替えていると、片付けを終えたチームリーダーのウマ娘が報告に戻ってくる。
「トレーナー、用具の片付け終わりました……それは?」
「うん? 爪の先が欠けただけだよ」
「そうですか……じゃあ手を貸してください」
「爪切りだけ貸してくれないか、自分でやるよ」
「いいから、動かさないで」
有無を言わさずこちらの手を取ると、やすりで爪を磨いていく。その様子に昔の記憶をつい重ねてしまう。





4: 名無しさん(仮) 2023/12/16(土)19:18:25

「はあ……またお母さんが呆れるよ」
「爪切りぐらいでいちいちプロに頼むのも申し訳なくてなあ……」
「いいでしょ、お父さんが練習台になってあげれば」
唇を尖らせてぶっきらぼうに言う姿は、やはり彼女に似ている。それがどこか懐かしく、そして微笑ましい。きっとこの子も悩みながら、それでも皆の記憶に残る走りを見せてくれるだろう。いや、自分がそうさせてやらねばならないのだ。
今夜はなにか良いものでも買って帰ろう、そう思いながら私は妻に送る文面を考えはじめた。




5: 名無しさん(主) 2023/12/16(土)19:19:24

地味に嫌だよね爪の欠け




6: 名無しさん(仮) 2023/12/16(土)19:20:01

爪のお手入れ良い…




7: 名無しさん(仮) 2023/12/16(土)19:20:39

娘にもやってもらってんのかよ




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