1： 名無しさん（仮） 2023/11/25(土)17:17:32

ダイワスカーレットは、常に一番であるべく己を律している。
ライバルに煽られて、つい地金を剥き出しにする事もあるが、それでも普段は優等生。あらゆる面で一番であろうとする貪欲な姿勢だ。
ストレスが溜まってやしないだろうかと、担当トレーナーは思った。
一番になるためなら、無限に自己を追い詰められる彼女は、猫を被り続けて辛くないだろうかと。
余計なお世話かもしれない。スカーレットが、装うのは辛い、苦しいと言った事は無い。それでも、自覚無自覚を問わず、溜め込んでいそうであると考えたなら。
トレーナーは奇行に走る事を厭わない。
丁度いい事に、何やら別荘で世俗から離れた暮らしをしてリフレッシュした、等という話がトレーナー間で広がっていた。
流行は良い。奇行扱いされないのだから。トレーナーも人の子、好んで奇人扱いされたくはない。
「という事で借りたのがこちらの別荘なんだ」
「わぁ！ 素敵じゃない！」
担当ウマ娘を連れてやってきたのは、木々に囲まれた一軒家。
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2： 名無しさん（仮） 2023/11/25(土)17:17:53

世間や友人達の目が届く筈もなく、素顔を知るトレーナーだけが傍にいる。ダイワスカーレットは大きく背を伸ばし、空気を吸い込んだ。
「なんだか空気まで美味しいわ……連れてきてくれてありがと、トレーナー！」
「いやいや、こっちの気分転換に付き合わせてるんだから、礼なんていいよ」
嘘ではない。担当ウマ娘が重賞での勝利を重ねれば、トレーナーにかかる責任は増す一方。
一度中央から逃れたい気持ちはあった。主題はそれではないだけで。
踊るような軽やかさで四方を見やるスカーレットを見て、トレーナーの心も軽やかになっていった。
愛バの心身の健康が、トレーナーの健康に繋がる。これはトレーナー界の常識である。
レースを控えての外出とはまるで違う、緊張感の無い時間。
今日はもう、丸一日を棒に振る。二人して、全く何もしない事に決まっている。
トレーナーは持ち出せる仕事を敢えて放置してきたし、スカーレットも外出用の最低限の荷物しか持ってきていない。
自然を活かしたトレーニングもしない。生活のあれこれ以外の一切を放棄した。

3： 名無しさん（仮） 2023/11/25(土)17:18:15

「こんなにのんびりするの、久しぶりね……」
「ああ……知らない鳥の鳴き声がするなあ……」
「そうね……風が気持ちいい……」
ため息のように、肺の中でわだかまっていた重たいものを、二人してゆっくりと吐き出す。
お揃いだと一緒にクスクス笑い、時間の流れるままに任せる。
並び立つ距離から、スカーレットがそっと寄り添う距離へと詰めてきて。トレーナーはされるがままにした。
腕と腕が触れ合っている。心音が高鳴るけれど、そこから先へは進まない。
今、この緩んだ世界を揺らしたくなかった。
「ん……」
「……」
隣にいる人を意識しながら、視線は変わらず木々の先へ向けたまま。少し肌寒くなるまで、二人はそうしていた。

4： 名無しさん（仮） 2023/11/25(土)17:18:39

「それでエアグルーヴ先輩が──」
「あの後桐生院トレーナーが──」
日々様々な情報を共有するが、いざただの世間話となると話題が尽きない。何もかもを言葉にし合うには、トレーナーとウマ娘の間にはまるで時間が足りない。
お互いの姿が無い間に起きた事を、あれこれ話していると、あっという間に夜も更けていた。もう寝る時間だ。
もちろんベッドは二つある。何も問題は無かった。
就寝の言葉を告げると、それぞれのベッドで横になり…………
「……ねえ」
枕元にスカーレットが立っているのを、トレーナーは見た。
星と月の明かりしか届かない夜の中でも、愛らしい少女だった。それでいて、何事か覚悟した表情は僅かに妖艶さも含んでいた。
「一緒に、寝ていい？」
トレーナーであれば断固として断るべき言葉だったが、弛緩した心と、お互いしかいない空間が口を滑らせた。
「いいよ」
二人は一つの布団にくるまった。

5： 名無しさん（仮） 2023/11/25(土)17:18:56

…………
……
アタシの調子が良いのはそういうワケなのよウオッカ。
アンタも別荘連れてってもらったら？ ちょっと、何鼻血垂らしてんのよ！
ハァー……何もしてないったら！ だってアタシ達はまだこれからだもの。何想像したのよエ□ウオッカ！
……トレーナーの身体はすごくあったかかったけどね。あーっもう追い鼻血やめなさいよ！

6： 名無しさん（仮） 2023/11/25(土)17:19:27

別荘いいよねって思ったらこうなった
まるで別の話になった事は少し反省している

7： 名無しさん（仮） 2023/11/25(土)17:20:14

いいと思うぜ…