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【ウマ娘怪文書】目を閉じても眠気は訪れず、瞼の裏にとりとめもない光景が浮かんで却って目が冴えてしまう。「…何か飲むか」自分の家ではない場所でだらしのない行為に浸るのは少しだけ気が引けるが、もう彼女とは遠慮し合う仲でもない


8: 名無しさん(仮) 2023/10/28(土)23:32:07

ああ。
でも。
「あ…ふふっ」
どんな形でもいいから君と愛し合いたい気持ちは、どうしても抑えられないみたいだ。




9: 名無しさん(仮) 2023/10/28(土)23:32:22

シーツの上に広がった長い髪は、彼女らしく奔放だけれど美しい。その髪を押しつぶさないように、彼女に重みを感じさせないように力を籠めていた両腕に、彼女の指がかかった。
「きみは優しいね。今も重くならないようにしてくれてる」
よじ登るように指が二の腕を這って、背中にくいと回される。それを支えにして身体を持ち上げた彼女の唇が、耳元に触れた。
「でも、今はだめ。
今はきみの重さを感じたい」

彼女の腕に引かれるままに、支えを失った身体が彼女に向かって倒れ込む。自分の重さで彼女とぴったりとくっついて、さっきよりもずっとはっきりと、彼女の温度がわかる。
「いいね。あったかい」
遠慮して触れられなかったときには、彼女がこんなにも温かくて心地良いだなんて、わからなかった。自分の重みがあるから、彼女の温かさも、柔らかさも、優しさも、全部感じる。

「寝ちゃおう?このまま」
頷く以外に、できることはなかった。
夜が明けるまでずっと、彼女と一緒にいたかった。




10: 名無しさん(仮) 2023/10/28(土)23:32:37

「なんで抱きしめてくれないの」
彼女に身を委ねたまましばらくそうしていると、背中に回された腕に力が籠ると同時に、拗ねた声音が飛んできた。
「寝づらいだろ?シービーが」
彼女と寝具の間に腕を入れるのが憚られたからそうしていたのだが、それは彼女のお気に召さなかったらしい。けれど、その答を聞いた彼女は気を悪くするでもなく、また優しく微笑んだまま、そっと囁いた。
「きみの言ってたこと、わかったよ。きみは重いけど、この重さは好き。
心地いい重さもあるって、きみが教えちゃったんだよ。
だから、きみもそうなっちゃえ」





11: 名無しさん(仮) 2023/10/28(土)23:32:52

彼女の背を抱いて、腕の中に閉じ込める。縛られるのを何よりも嫌う彼女だけれど、望みが叶ったように楽しそうに微笑む姿は、きっと心からの思いなのだろう。
「やっぱり不自由じゃないか?こういうの」
茶化すように訊いた問の答は、彼女らしくどこまでも爽やかだった。
「そうかもね。でも、幸せな不自由もあるって、きみといてわかったから。それに、アタシの自由はなくなってないよ。
きみに預かってもらってるから」

彼女の大切な宝物を預かって、そうしなければ味わえない幸せを届ける。
何とも大変で、何とも幸せな仕事を引き受けてしまったものだ。
「じゃあ、大事にしなきゃな。
シービーの一番大切なものだから」




12: 名無しさん(仮) 2023/10/28(土)23:33:04

彼女がそう思い続けてくれるかはわからないけれど、この仕事は誰にも渡したくない。
自分の幸せと、彼女の幸せ。
それが同じかたちをしていることが、こんなにも嬉しいのだから。








13: 名無しさん(主) 2023/10/28(土)23:34:35

おわり
眠れない夜にシービーと一緒にお互いの重さとぬくもりを感じていたいだけの人生だった




14: 名無しさん(仮) 2023/10/28(土)23:38:02

不自由な幸せも自由でいる幸せも両方愛せるようになったんだ…




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