【AC6怪文書】スネイルの砲撃によりアーキバスに囚われた私は、機体より引き剥がされそのまま殺される…かと、思っていたが。記憶の限りではスネイルがいつもの様に怒り狂った末"再教育"と言って私をどこかに運ばせる様子だった。
2: 名無しさん(主) 2023/10/28(土)14:19:41
「なんだ…旧世代の強化人間…んんん!?」
この妙にうるさい声を上げるのは確か…VIIだったスウィンバーンだったか、そんな感じの名前だったはずだ。
「そうか、遂にお前も捕まっていたか、いい気味だ」
好き勝手言ってはいるが、そっちも見る影もないボロボロ具合だ…と言うにも、肉体側は酷い言語機能が更に落ち込む程弱っている。
「お、おい!?横の部屋でくたばる気か!?勘弁してくれ!!」
うるさい…相変わらず騒がしい奴だな、と思っていると何かが落ちる音がして
「それでも食って寝てろ!まったく隣で死なれたら敵わん…」
どうやらレーションを投げ込んできた様だ、貰えるなら有り難く頂く事にした。
3: 名無しさん(主) 2023/10/28(土)14:20:09
それから暫くの間、同じ場所で再教育の日々となった…のだが。
「ああああああっっ!!!やめろやめてくれ!!私だぞ!ヴェスパー相手にそんな事をしていいと思ってるのか!?」
「勘弁してくれええ!!!此処から出た暁には、私の方から謝礼だって用意するから!!!」
「おわああああああああ!!!!???」
うるさい、これ以上ないほどうるさくてこっちが再教育されてても全く集中できない。
どうやらスウィンバーンは長らく再教育に耐えていたと言うより何かと騒がしく生き汚い故に残っていた様で。
「見たか!さしもの奴らも私の交渉に陥った様を!」
いや交渉ではなく普通に諦めた様に見えたが…
「私はこんな場所で朽ち果てるわけにはいかん、如何にかして抜け出しやり直すのだ」
成る程、思ったよりも前向きな様だ…此処にきてからエアもいつもの様な様子に戻っている。
『レイヴン、彼は何故此処まで元気でいられるのでしょうか?理由がわかりません』
私にもわからないよエア。
4: 名無しさん(主) 2023/10/28(土)14:20:49
「ほう…?貴様も脱出の予定を立てている、だと…?」
幾ばくかの時が立ち、私はそれをスウィンバーンに伝えていた。
RaDが此処に忍び込みジャンクからACを少しずつ組み上げ、それに乗って抜け出す計画だ。
「何かと無茶な作戦ばかりしていたようだが、こればっかしは無理がある様に見えるぞ!?」
確かに、BAWSの物をジャンクに偽装した過程で更にスペックは落としている、が。
その上で押し通らなくては己の任を果たすことは出来ない。
スウィンバーンに話したのは訳がある。
この男は以前に再教育センターを管理していたのもあり、警備や配備されてる機体などにも知識があると踏んでいたのだ。
「大体貴様に協力する理由はないだろうが」
嫌そうな顔をしている、想定内だ。
私は交渉というものには全く長けていないが、ことこの男であれば手段はある。
5: 名無しさん(主) 2023/10/28(土)14:21:12
「何?私の脱走の助けもする…だと?」
手段は簡単だ、配備されているMTを多数撃破し警備に風穴を開ける。
そうすれば後期の強化人間たるスウィンバーンなら多少の人の警備を抜けるだけで問題はない。
「成る程…ともすればジャンクACで多数のMT部隊を撃破する必要があるが?」
問題はない、少なくとも視認されず警備を抜けてACを倒せ、などという話よりは簡単だ。
「やめろ嫌な事思い出させるのは」
「…だが、まあいい」
スウィンバーンは悪い顔をして此方を見て。
「貴様には一度話を聞いてもらった借りもある、その分位は手を貸してやろう」
6: 名無しさん(主) 2023/10/28(土)14:21:50
脱走決行当日、私はスウィンバーンの簡易的なブリーフィングを思い出す。
「元々再教育センターは外からの敵を追い払う程度の警備しか用意はせん」
「性質上、ACを配備し直している可能性はほぼゼロと見ていい」
それは事実の様で、暫く暴れてもACは出る事はなく進んでいくことができた。
「おそらく最大の脅威は四脚MTになるだろうが、あの機動力なら振り切ってしまえば問題はないだろう」
カメラにそれを視認して、迂回路に曲がっていく。
「大層なことを言っていたが、ACはそう優位性のある兵器ではない」
「大した期待はせず待っておくぞ」
などと、奴は言っていた…が。
幸いにもRaDの用意した足は、思ったよりも動いてくれるようだ。
7: 名無しさん(主) 2023/10/28(土)14:22:25
……………………………………………
……………………
「化け物め…」
ボロボロの機体が道を封鎖する四脚MTに突き立てた拳を引き抜く。
悪夢の如き戦闘に警備網は既に混乱に陥っていたようで。
「奴め、本気で此処までするか!?」
スウィンバーンはどさくさに紛れて、収容房から同じく抜け出していた。
「あんな機体でよくやるものだ、しかしこれは好都合…」
「もはやこんな星に残る必要はない、さっさと地上に上がるとしよう」
「しかし此処はどこだ?こんな都市があったか?」
そもそもの技研都市など知りもしない男は、完全に迷子になり始めていたのだが。