【ウマ娘怪文書】アグネスタキオンの開発した新薬を彼女から譲り受けたカレンチャンは、早速お兄ちゃん───もとい自分のトレーナーに使ってみることにした


1: 名無しさん(仮) 2023/10/17(火)07:02:44

アグネスタキオンの開発した新薬を彼女から譲り受けたカレンチャンは、早速お兄ちゃん───もとい自分のトレーナーに使ってみることにした。
なんでも依存性・危険性等の心配は全く無く、飲んだ人間が少し素直になるだけの薬との事で、それならばとカレンチャンは自分のトレーナーに飲ませるべきだと実験協力役を申し出たのであった。「お兄ちゃん、今朝カレンがあげた新発売の紅茶飲んだ?」

放課後にトレーナー室へ訪れたカレンチャンはトレーナーにそう尋ねた。

「ああ、あれか…ごめんまだ飲んでないや。彼は美味しいって言ってたけど」

「彼?」

話を聞くと、アドマイヤベガのトレーナーが饅頭を喉に詰まらせたのでお兄ちゃんは紅茶を飲ませてあげたらしい。やんぬるかな。その紅茶にはアグネスタキオンから譲り受けた例の薬が入っているのだ。




2: 名無しさん(仮) 2023/10/17(火)07:03:57

カレンチャンは一目散に駆け出し、学園の中庭へ出た。
薬を飲んだ彼はどこにいるだろう。考える間も無く目の端に異常なものが留まった。
正確には、今のこの場においてそれが存在するのは異常、というべきだろう。トレセン学園の中庭には、一匹の羊がいた。
犬や猫ならまだしも、羊は流石に珍しい。ルームメイトが見たら喜ぶだろうか────等とどうでもよい思考が一瞬よぎる。「カレンチャン、助けて」

彼女に話しかける声があった。それの主を探して首を左右に振るが、声が届きそうな範囲に人は見当たらない。

「ここだよ」

もう一度声が聞こえる。察しが良いとお兄ちゃんからのお墨付きを貰っているカレンチャンは、その声が目の前の羊から発せられた物である事に気付く。






3: 名無しさん(仮) 2023/10/17(火)07:04:46

「えーと……羊さん?」その羊の話によると、自分はアドマイヤベガのトレーナーで、さっき羊になったらしい。原因は不明。そりゃそうだ。まさか今朝飲んだ紅茶にすごい薬が入っているとは思うまい。

「遅かったか…」

息を切らしながら駆けつけたのは渦中のアグネスタキオンだ。カレンチャンは彼女に圧を掛けながら問いただした。場合によってはカワイくする必要がある。

「渡す薬を間違えていたよ。彼が飲んでしまったのは羊になる薬だ」

「羊になる薬!?どうするんですか!アヤベさんになんて言い訳したら…」

「え?この羊くん、君のトレーナーじゃないの?」





4: 名無しさん(仮) 2023/10/17(火)07:05:34

口論をしていると、いつのまにか羊────じゃなくてアヤベさんのトレーナーが動かなくなってしまった。というより寝ている。寝息を立ててスヤスヤとしている。「トレーナーさーん?おーい…」
「薬の副作用だねぇ」
「どうすれば元に戻るんですか?」

簡単だよ、とアグネスタキオンはペースを乱さずに説明を始める。その態度に少し思うところが無くは無いカレンチャンだが、優しいので少しだけ圧を掛けるとタキオンはこほんと小さく咳払いをしてから続けた。

「ウマ娘に3分間密着して貰えば元に戻るよ」
「へ?それだけでいいんですか?」

カレンチャンがきょとんとして問い返すとタキオンはウマ娘の体から発する成分がどうとか、聞いたこともないような式を口から発し始めた。カレンチャンは聞くか聞かないか、それならカレンが…と羊さんに向かって歩みを向ける。
するとタキオンに手を掴まれ止められた。隠れたまえ、と茂みに引っ張り込まれる。




5: 名無しさん(仮) 2023/10/17(火)07:06:26

「いたた…何するんですか」
「理事長とたづなさんが来た」
「へ?」「あの羊が尋常の獣でない事は誰でもすぐに気付くだろう……その場に私がいるのは不味い」
「ああー……」

確かに、ただでさえ普段から怪しい薬を作ったり実験を行っているアグネスタキオンだ。人を羊に変える薬等という危ない物を作ったと知られては、本格的に学園側から手が入るのは避けられまい。

「そうなれば君も共犯だよ」
え、と固まるカレンチャン。安全な薬であるとタキオンから虚偽の申告をされた被害者ではあるが、危険人物の実験に協力をしトレーナーを危険に晒したのは間違いない。




6: 名無しさん(仮) 2023/10/17(火)07:07:31

どうすればいいのかわからずカレンチャンは茂みから動く事ができずにいた。
理事長とたづなさんの方を見ると、たづなさんが携帯電話を取り出していた。しかるべき場所に連絡を入れて対処するつもりだろう。不味い。たづなさんの行動は、訪れたウマ娘達によって遮られた。
羊がいるとわかった彼女たちは途端に黄色い声で騒ぎ、周りにもそれが伝わりちょっとした騒ぎが起こり始める。

「このまま隙を見て羊を奪取すればあるいは…」
タキオンがこの状況に対する解決策を提示する。




7: 名無しさん(仮) 2023/10/17(火)07:08:35

「でもタキオンさん…あの羊、ウマ娘に密着されると人間に戻るんですよね?これ不味くないですか?」「その心配は無用だねぇ。いくら可愛くても家畜。それに野良ではないか、衛生的に大丈夫なのか…色々と懸念もある。ご覧よ」

確かに、よく見ると羊を撫でたりつついたりするウマ娘はいても、抱きついたり密着するような子は見受けられない。流石にいきなり現れた家畜動物にベタベタするのは年頃の女の子たちには難しかったようだ。

「よっぽど動物やふわふわした物が好きな人でも訪れない限りは、彼が大勢の前で人の姿に戻るシーンを目撃される心配はないよ」

「駄目だアヤベさんが来た」




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