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【ウマ娘怪文書】養護教諭という職業は生徒の負傷や体調不良は勿論、多感な思春期達のメンタルケアの技術も必要とされている。


1: 名無しさん(仮) 2023/09/01(金)20:19:41

養護教諭という職業は生徒の負傷や体調不良は勿論、多感な思春期達のメンタルケアの技術も必要とされている。
特にトレセン学園においてはトレーナーというウマ娘の怪我の応急処置や健康管理についてのプロフェッショナルが何人も在籍している以上、放課後の仕事については生徒の相談が殆どになる。
時計を見ると三時五十分を迎えようとしていた。彼女のトレーニングが無い水曜。いつも四時丁度にここに来る。
机に出していた温度計をしまい、用意していたお菓子をレジ袋から取り出す。可愛げの欠片もないひねり揚げは私の、そしてカステラは彼女のために買ったものだ。パッケージにはふわふわっと大きく書かれている。最近はコンビニのお菓子もクオリティが高くてありがたい。




2: 名無しさん(仮) 2023/09/01(金)20:20:04

四時を時計が指し示すと同時にコンコンコンと淡白なリズムで保健室のドアが叩かれる。
「失礼します」
「こんにちはアヤベさん」
「こんにちは」
私がニッコリと笑うと彼女も優しく微笑んだ。相変わらず会話は弾まないが、それでも最初に来た時から大分表情が柔らかくなったようだ。
「とりあえず座って座って、実はアヤベさんにお菓子買ってきたのよ!」
「え…?あの…申し訳ないです…」
アヤベさんはソファに座ると目の前のカステラを見つめたまま落ち着いた声で言った。
「いいのいいの!私がお菓子食べたかっただけだから!食べながらお話しましょ?」
私はそう言ってひねり揚げの袋を開けた。彼女の方もカステラに手を付けてくれるようだ。
それから軽く雑談をして、私は自分の選択を後悔した。彼女の控えめな声量には爆音のひねり揚げの咀嚼音は明らかにミスマッチだった。白衣に飛び散ったきつね色の粉を見て私はそっとひねり揚げの袋を置いた。






3: 名無しさん(仮) 2023/09/01(金)20:20:25

彼女はと言うと、私の話に時折相槌をうちながら美味しいカステラに舌鼓を打っていたようだ。改めて、彼女がこうやって笑っていることのありがたみを感じる。
つい数ヶ月前まで自分自身に囚われていた彼女は、彼女のトレーナーや友人達に助けられて好きな物を好んで笑えるようになったのだ。
私もその時、週に何回か相談に乗ってはいたが私だけで彼女が前に進めたかどうかは自信が無い。養護教諭という職業の限界を否が応でも思い知らされたような気がした。
「それで?アヤベさんは最近どう?」
「どう…?」
「あはは、ちょっと曖昧すぎたね。本当になんでもいいんだよ?楽しかったことでも嬉しかったことでも、勿論悩んでることがあるならそれもいい」
「悩んでること…」
彼女の表情が一瞬曇った。職業上、どんなに小さな変化でも見逃しはしない。





4: 名無しさん(仮) 2023/09/01(金)20:20:47

「なんでもいいんですよね…」
「うん」
「その…えっと…」
「ゆっくりでいいよ」
「はい…私…あの人…トレーナーを見ていると…変な気持ちになって…」
やっぱりね…私は心の中でそう呟く。トレーナーに恋するウマ娘なんてそれこそ星の数ほど居る。特にこの娘の境遇ならなって当然とすら言えてしまう。
もし私が彼女の友達Aなら、思い切って想いを伝えなよ!なんて言うのかもしれない。しかし結局私は大人な訳で、彼女の恋路を表立って応援する訳には行かない。
一時の気の迷いだとか生徒と指導者の関係だとかまたあの重苦しい説得をしないといけないのかと気分が沈む。
「その…アヤベさ…」
「見てると…ここが…ムズムズするんです…」
私の声など一切耳に入ってなかった様子の彼女はスカートの上から鼠径部に手を当てていた。




5: 名無しさん(仮) 2023/09/01(金)20:21:35

私は一瞬だけ固まってしまったが、瞬時に対応を考える。養護教諭として一番やってはいけないのは頑張ってうちあけてくれた子を頭ごなしに否定することだ。
「教えてくれてありがとう」
「やっぱり…変ですよね…」
彼女の顔は見た事もないほどに赤くなり少しだけ大きめな耳は前に伏せていた。恐らく友人にも誰にも打ち明けられずに悶々としていたのだろう。
「そんなことないよ」
「でも…私…ここを触るのが辞められなくて…」
いつの間にか鼠径部を抑えてた彼女の手は握りこぶしに代わりスカートを掴んで震えていた。
「アヤベさん…好きな人が出来て、そういうことをするのは全然変なことじゃないよ」




6: 名無しさん(仮) 2023/09/01(金)20:21:49

私はクレバスの潜む雪原を進む探検家のように一歩一歩滑落しないように言葉を選ぶ。
「し過ぎで体調を崩さない限りは全然気にしなくて大丈夫!」
「………」
「……どれくらいしてるの…?」
「………」
「あ!…答えたくなかったら」
「毎日…」
「…そ…そう…!そうね…!アヤベさんも若いのよね…!」
この対応が正解かどうかなんて分からない。
気まずい沈黙が流れないよう尽力することにした。




7: 名無しさん(仮) 2023/09/01(金)20:22:12

今はとりあえず、彼女が自分から悩みを打ち明けてくれることを喜ぶべきだった。
ゆっくりと一言一言思いが込められた彼女の告白は続く。
「…でも最近…一人でしてるだけじゃ…全然…スッキリできなくて……」
手だけでなく体全体が震えた彼女は涙声で声も少し上ずってしまっていた。
「それでこの前…寝ていたあの人の頬に触れたの…そしたらもう我慢できなくなりそうで…怖くなって…!」
大粒の涙を流しながら話す彼女を抱き寄せる。今までずっと不安だったろう。
「それで…それから…してなかった…そしたら…さっき…会った時に」
「また変な気分になっちゃったんだ」
彼女は私の胸元でこくりと頷いた。
今更、好きになった人を諦めなさいと言える訳がなかった。




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