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【ウマ娘怪文書】「凱旋門賞目指すぞ」 なんだか凄そうな学園のプログラムの講習が終わったあと、トレーナーさんは開口一番にそう言った


1: 名無しさん(仮) 2023/08/31(木)00:20:32

「凱旋門賞目指すぞ」
なんだか凄そうな学園のプログラムの講習が終わったあと、トレーナーさんは開口一番にそう言った。
「……へ?」
「凱旋門賞だ。フランスの。君だって名前くらいは聞いたことあるだろう」
「いやいや……流石に私でも知ってますって。いや……でも、えぇ……?」
いくら他の子と比べてレースへの関心が低い私だって知っている。日本のウマ娘ならば一度は勝利を夢見る海の向こうで行われるレース。今まで、国内で活躍した先輩が何人も挑戦したのにも関わらず未だに勝利したウマ娘はこの国にはいない。
「行くってつまり、走りに行くってことですよね? 観光ではなく」
「当たり前だろ。あのトロフィーを取りに行くんだよ」
「いやいやいやいや! ちょっと待ってくださいよ! 私、まだ重賞も走ったことないんですよ!? いくらなんでも気が早いですって!」
「なんだ。じゃあ国内の重賞勝ったら行くのか?」
「うーん……もしもですよ? もしもダービーとかで勝てるなら、万に一つくらいは勝てるかもですけど……」
「じゃあまずはダービーだな! これからがんがん練習していくぞ!」






2: 名無しさん(仮) 2023/08/31(木)00:21:10

あ、ダメだ。この人、頭が凱旋門賞で埋め尽くされてるんだ。大体、そんな夢を見るなら他のウマ娘をスカウトするべきだったんじゃないかなって……
その後の練習はまぁ、キツかった。スペシャルトレーニングとか称して他のウマ娘を引き連れて私を追いかけ回すのだ。他のガチな子を巻き込んでしまっているため、手を抜くこともサボることもできない。まぁ、週末に仕事ばかりしているトレーナーさんを無理やり連れ出して娯楽を教えるのが習慣になったからなんとか耐えられたけど。
「一着はヒシミラクル! 圧倒的な実力をダービーの舞台で見せつけました!」
「ぜぇ……ぜぇ……ウソぉ……勝った? 勝っちゃった!?」
「よくやったぞ! ヒシミラクル!」
無我夢中に走っていたら、なんと3バ身をつけてダービー1着。トレーナーさんがあまりに喜ぶものだから、私としても頑張ってよかったな、なんて。あ、後でお母さんたちにも報告しなきゃ。
「ヒシミラクルさん、なにかダービーにかけていた想いなどはあるのでしょうか?」
「あ、ここ勝てたら凱旋門賞も無くはないかも……みたいな話をトレーナーさんとしてました」




3: 名無しさん(仮) 2023/08/31(木)00:21:44

インタビュー慣れしていない私はうっかり思っていたことをそのまま答えてしまった。
後日、普通にちょっと炎上した。
「よし! ダービー獲れたしフランス行くぞー!」
「ちょっとちょっと! トレーナーさん……そりゃ確かにあり得るかもみたいな話はしちゃいましたけど……だからって無茶ですってぇ!」
「いや、君なら勝てる! フランス語の勉強だってしてきただろ!」
「あー……そっちはレースに集中するためにちょっと緩めにしてたっていうか……ぼんじゅーるくらいは言えますよ!」
「そうか。じゃあこれから猛勉強だな!」
「な、なんで諦めてくれないのこの人……」
気がつくと私はフランスに連れて行かれていた。フランス語の方はトレーナーさんの鬼の追い込みによってなんとかホテルで過ごすくらいにはできるくらいになっていた。
フランスでの練習はこれまた一段とキツかった。というか、意味がわからないトレーニングばかりだ。オペラの真似して本当にスタミナが伸びるのかな? まぁ、プールよりはマシだしいっか。





4: 名無しさん(仮) 2023/08/31(木)00:22:26

「凱旋門賞に挑戦する前に、とりあえず重賞に挑んで体を慣らそう。君はとにかくいつも通りがむしゃらに走ってくれればいい」
「うーん……フランスのレースとかフランス語よく分からないからそこら辺はトレーナーさんにおまかせしますけど」
こうして私は重賞で何度か勝負してから凱旋門賞へ……行くと思っていたんだけど…………
「あのぉ……トレーナーさん? 慣らしにしてはその、観客の人が多いっていうか、規模が大きすぎません?」
「あぁ。なんたって凱旋門賞だからな」
「えー!? ちょちょちょ、凱旋門賞は体を慣らしてからって言ってたじゃないですかぁ!」
「前回は勝ったんだから大丈夫だ。君なら勝てる!」
「どこからその自信来てるんですかもう……分かりましたよ! ここまで来たら走ります! 終わったら褒めてくださいよ!」
フランスの芝はまぁ重かった。海藻みたいに私達の足を邪魔していて、多分、この日のレースはそれまでで一番キツかった。走り終わったあと、トレーナーさんが涙を流していたので駆け寄る。私、私なりに頑張りましたって言うんだ。




5: 名無しさん(仮) 2023/08/31(木)00:23:07

「よくやったぞ、ヒシミラクル……俺は信じてた!」
「もー大げさですよ。でも、私の全力は出せました!」
「これで日本初の凱旋門賞勝利だ! すごいことだぞ!」
「……へ? 私、勝ったんですか? あのぉ、最終直線でフランスのウマ娘の皆さんに囲まれて、それでぐわぁーっとなって……負けちゃったんじゃ?」
「なに言ってるんだ、モニターを見ろ! クビ差で勝利だ!」
わーホントだー……と、あまりにも現実味がなかったから、まるで映画のワンシーンを眺めるかのように私はぼーっとモニターを見上げた。どうやら、勝ってしまったらしい。あ、でもそんな気持ちじゃみんなに怒られちゃうよね。しっかり頑張って、しっかり勝てたんだ、私。
「凱旋門賞にかける想いはどのようなものだったのでしょうか!?」
「いやぁ……トレーナーさんが凱旋門賞勝利だぁー!って言ってて、それで私も頑張るかぁって感じで。それで、頑張ってたらなんか勝てちゃいました」
いい加減、レース直後にインタビューするのはやめて欲しい。頭が回らない状態で答えるから、頭の中の言葉を整理せずに喋ってしまうのだ。
翌日、しっかり炎上した。




6: 名無しさん(仮) 2023/08/31(木)00:23:38

「よし。ヒシミラクル、帰国の準備だ。次の目標は宝塚記念だぞ!」
「トレーナーさん! 私、凱旋門賞勝ったんですよ? ちょっとくらいご褒美とかあっても……」
「なに言ってるんだ。来年また獲りにくるんだからそんな暇はないぞ」
あぁ、やっぱりこの人、凱旋門賞のことしか頭にない。どうしてそんなにこだわるんだろう。
「あの、なんでそこまで凱旋門賞が欲しいんですか?」
「君なら獲れると信じてるからな」
「え……いや、トレーナーさん自身の理由というか……ほら、凱旋門賞って特別ですし」
「そうだ。君が走れるレースの中では一番権威があるだろうな。だから、獲るんだ」
……なんか、トレーナーさんってちょっとおかしい人?まぁ、信じてくれてるならできる限り頑張りますけど……
あぁ、でもフランス観光はしたかったなぁ…………⏰

そして1年後。宝塚記念で勝利した余韻に浸る間もなく私たちは再びフランスへ。ちなみに、宝塚記念勝利後のインタビューはまたもや私の失言で話題となった。




7: 名無しさん(仮) 2023/08/31(木)00:24:13

「まぁ……凱旋門賞ほどキツくはなかったですね」
その日のうちにめちゃくちゃ炎上した。
フランスでの練習の日々。そしてレース。今度はもう少しフランス語を勉強したので、前回のようにトレーナーさんに騙されることはないはずだ。
「今回は君の実力を信じて余計な作戦会議はしない。全力でまた凱旋門賞を獲ってやろう!」
「はい……ヒシミラクル、頑張ってきます!」
1着、ヒシミラクル。今度は2バ身差。流石に私も勘違いしなかった。たっぷり努力して、しっかり勝利したのだ。
「凱旋門賞連覇という歴史的快挙ですが、今のお気持ちは!?」
「去年よりはラクでしたね」
だからやめましょうって! 走った直後の質問するの!インタビューは生中継だったので世界中に見られた。
どうやらこの2年間で失礼なことを言いながら勝利するというのが私のキャラクターとして定着したらしく、特に炎上はしなかった。




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