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【AC6怪文書】ルビコンの解放者、レイブン。この星でその名を知らないものはいないだろう。しかし、彼の行方を知っている人間はこの惑星……いや、この宇宙に"1人"も存在しない。


1: 名無しさん(仮) 2023/09/14(木)00:53:12

ルビコンの解放者、レイブン。この星でその名を知らないものはいないだろう。しかし、彼の行方を知っている人間はこの惑星……いや、この宇宙に"1人"も存在しない。
「レイブン、ご飯ができました」
人々の足音すら聞こえない、放棄された住宅街のうちの1つ。人間が暮らすのに不自由がないように改修とインフラの整備がなされたその部屋に私の声だけが響く。
「レイブン、ご飯ですよ。調理方法を変えてみました」
私の呼びかけに応じて、彼はのそのそと布団から這い出る。あの戦いの後、残された莫大な資金を元に彼は手術を受け、"普通の人間"としての肉体を取り戻した。しかし、私から見て、彼がそれほど変わったようには思えない。
「……その身体には慣れた?」
「はい。あなたと同じように世界を感じ、あなたに触れることができる……嬉しいです。レイブン」
技研の遺産の1つ。コーラルを動力にするだけでなく、限りなく人に近い知覚を与えるという都合の良い代物。けれど、彼が払ってきた代償に比べれば取るに足りないに違いない。
「そっか……なら、よかった」






2: 名無しさん(仮) 2023/09/14(木)00:53:56

彼が手術を受ける直前に注文したこのボディ。その理由を、私はまだ彼から聞いていない。
手術を終えたあと、彼はすぐに世界から姿を消した。もちろん、私も協力した。電子上に彼を示すものは何一つ存在しない。様々な依頼が彼に届き続けたが、私たちはそれらを無視し続けた。彼が何を求めているのか、私には分からない。けれど、ウォルターが言ったように……ここから先は彼の人生だ。私は彼が望む生活をできる限りサポートするのだと決めた。
「……レイブン? 食べないのですか? それともやはり、美味しくなかったでしょうか……?」
「いや。美味しいよ」
「ならば、私があなたの口まで料理を運びましょうか? 咀嚼も代わりに行ってもいいんですよ?」
「必要ないよ。大丈夫」
そのまま、ゆっくりと食事は進んだ。私はこの時間がとても好きだった。彼は食事と排泄、そして入浴以外はずっと布団にこもっている。私が彼とコンタクトを取れるのは限られた時間でのみだ。この体を捨ててあの頃のようにずっとレイブンと交信をしたいとも思ったが、彼のくれたこの体を捨てる気にはどうしてもなれなかった。




3: 名無しさん(仮) 2023/09/14(木)00:54:48

「選択することが嫌になったんだ」
食事を終え、皿を片付けた頃。手術を受けてから初めて、彼は自発的に私に話しかけた。
「俺の選択で、みんな死んだ。手術を終えてから、そのことがずっと離れない」
「レイブン。それは違います。あなたは護ったんです」
「失ったものしか分からない……それしか知らないんだ。みんないい人だった。ウォルターも、カーラたちも、みんな……」
彼はその時、初めて笑った。私は初めて見る彼の笑顔に、たまらなく惹かれた。
「君しか残ってないんだ。友達。……だから、体を注文したんだ。再手術で声が聴こえなくなるかもと思って」
彼の瞳に、あの頃のような意志はなかった。ただ虚ろに笑って見せるだけ。それでも、私は……
「レイブン。あなたがなにも選ばずに生きていくというのなら……私はあなたを支えます。永遠であろうとも」
「ありがとう」
彼は再び布団へと向かう。いつもと違い、私も彼に続く。理由は極めて個人的で、浅ましい。つまり、彼に拒絶されることがないだろうと確信したからだった。





4: 名無しさん(仮) 2023/09/14(木)00:55:28

「今夜は一緒に寝ましょう」
「……いいよ」
彼と同じ布団に入り、ピッタリと彼に体を寄せる。彼の体温、鼓動、吐息。ずっと感じたかったものがそこにはあった。
「ここにいると落ち着くんだ。銃弾の音も何もなくて、ただ暖かくて……」
「私は異物ではないでしょうか?」
「……うん。嫌じゃない」
彼は私の手を取って、何度も撫でた。その度に、私に電撃のように駆け巡る快感。人の感覚ではこれは何に当たるのだろうか?
「握ってみたかった……みんなの手」
「レイブン……私だけでは、不満でしょうか?」
「……いや。君がいれば……それでいい……かもな」
彼の言葉で再び私の心が満たされる。コーラルが増えるプロセスのように、私の中で何かが満ちていく。
彼には私しかいない。彼は私を拒まない。彼は私を選んだ。彼は求めている。彼は私だけを見ている……
「大丈夫です。レイブン。私はずっとあなたと共にいます」
知らなかった、こんな気持ち。彼と肌を合わせて、体温を共有して。溶け合ってしまいたいなんて、今まで考えたこともなかった。過去ばかり映している彼の瞳を私に染めてしまうほどに、触れ合いたい。




5: 名無しさん(仮) 2023/09/14(木)00:55:47

「一緒に生きましょう。あなたが心配することはもうなにもないのですから」

これは、私の責任でもある。彼の人生を、私は彼の望むがままにしなくてはならない。だから、彼が私を望んでいるのならば……当然、私はそれに応えなければ。きっとそれが、コーラルと人間の……

「エア……君も暖かいんだね……」

いや。もはやこの惑星がどうなろうと、私は彼の傍にいよう。いつか焼け付くような業火が私たちを包むなら、その時こそ……混ざり合ってしまえばいい。




6: 名無しさん(仮) 2023/09/14(木)01:00:55

いいものを見た




7: 名無しさん(仮) 2023/09/14(木)01:02:51

衝動のままに書いちゃったから破綻があっても許しておくれ




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