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【2ch小説】寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。


265: 名も無き被検体774号+ 2013/05/08(水) 14:16:24.67 ID:3etpqdGe0

気付けば俺はぼろぼろ泣いていたな。
二人は、そんなみっともない俺をなぐさめてくれた。

で、驚いたことに、俺の想像している以上に
俺のことを知ってるやつは多いらしくてさ。
“またクスノキが新しいことやってるぞ”って感じで、
徐々に俺の周りには人が集まってきたんだ。

俺はミヤギとは喧嘩別れしたってことにしといた。
向こうが俺を見限って、捨てたってことにしたんだよ。

「ミヤギはクスノキの何が気に入らなかったんだろう?」
女子大生っぽい眼鏡の子が、怒ったように言う。
まるで本当にミヤギが存在したかのような口ぶりでさ。

「こんな良い人をおいて消えるなんて、
そのミヤギってやつは、本当ろくでもない女だな」
若いピアスの男はそう言って、俺の背中を叩いてくれた。

俺は何か言おうとして顔を上げて、
でもやっぱり言葉につまって、
――そのとき、背後から声がしたんだな。

「そうですよ、こんな良い人なのにねえ」って。




267: 名も無き被検体774号+ 2013/05/08(水) 14:21:22.32 ID:3etpqdGe0

その声に、俺は聞き覚えがあったんだよ。
一日や二日で忘れられるもんじゃない。
俺にその声を忘れさせたかったら、三百年は必要だね。

声のした方を向く。
俺は確信していたんだ。
聞き間違えるはずはなかった。
でも実際に見るまでは、信じられなかった。

「そのミヤギって人は、ろくでもない女ですね」

ミヤギはそう言うと、自分でくすくす笑った。




269: 名も無き被検体774号+ 2013/05/08(水) 14:23:30.70 ID:3etpqdGe0

「……すごいですよね、たった三十日で、
私の人生の大半を買い戻しちゃったんですから」

隣に座ったミヤギは、俺によりかかりながらそう言った。

周りの人間はあぜんとした顔でミヤギを見てたね。
そりゃまあ、実在してるとは思わなかっただろうなあ。

「あんた、もしかしてミヤギさん?」と一人の男が訊ねて、
「そうです。ろくでもないミヤギです」と彼女が答えると、
俺の手を取って「良かったな!」と祝ってくれた。

だが、当の俺はまだ事情を飲み込めずにいた。
なんでミヤギがここにいるんだ?
どうして周りの人の目にミヤギが映ってるんだ?





270: 名も無き被検体774号+ 2013/05/08(水) 14:27:00.82 ID:3etpqdGe0

ミヤギは俺の手を握り、説明してくれた。
「つまり、私もあなたと同じことをしたんですよ」

俺が寿命を三日だけ残して売った直後、
あの代理監視員の男が、彼女に連絡したらしい。
『クスノキとかいう男、自分の寿命をさらに削って、
お前の借金をほとんど返しちまったぜ』、ってさ。

それを聞いたミヤギは、すぐに決断したそうだ。

「三日残して、あとは全部売っちゃいました」とミヤギは言った。
「おかげで、借金を返しても、まだまだお金があまってます。
三日間だけじゃ、とっても使い切れないくらい」




271: 名も無き被検体774号+ 2013/05/08(水) 14:29:12.18 ID:/9PnbSkx0

あれ?なんだろう
今日は暑くも無いのに目から汗がでるぜ




272: 名も無き被検体774号+ 2013/05/08(水) 14:30:41.52 ID:nqgPhjlgP

寿命買うことが出来るのなら買ってくれよ・・・




273: 名も無き被検体774号+ 2013/05/08(水) 14:31:04.58 ID:3etpqdGe0

「さて、クスノキさん」

ミヤギは俺に微笑みかける。

「これから三日間、どう過ごしましょう?」




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