【ウマ娘怪文書】トレセン学園において学生の本分は勉学とレースだが、その限りではない生徒もごく稀に存在する
2: 2/3 2023/03/12(日)20:45:34
「上手いんだけど、こう……上手すぎて心に残らないというか」
「……なるほど。洗練された中にも破綻を内包している芸術作品のようであれ、ということですね」
「あっ、はい……せっかく始球式に立つんだし、ルビーらしく投げてもらえたらいいなと」
「では、試しにそのように……」
ダイイチルビーはひとつ深呼吸をして、改めて投げる
ボールはまたしても正確に、より力強い音を立ててキャッチャーミットに収まった
「っ!……いいぞ、ルビー!」
「ありがとう存じます。ところでトレーナーさん……どなたからの入れ知恵ですか?」
ダイイチルビーのトレーナーは彼女の担当に選ばれるまで、高貴な家柄とは無縁の人生を歩んできている
芸術に対する造詣が深いとも言えない彼がダイイチルビーの方針に口を出すことは珍しいことであった
「ああ、ライアンとマックイーンに相談し……っ!!は、早いよルビー!」
「ありがとう存じます」
「いや、褒めてるんじゃなくて……」
会話そのものを切り裂くような鋭い投球は、やはり正確にキャッチャーミットに突き刺さった
球威はさらに上がり、制球もわずかにブレ始めている。もし取りこぼしたら大事になっていただろう
3: 3/3 2023/03/12(日)20:46:32
「メジロ家といえば私たち一族に勝るとも劣らない名家。彼女らに借りを作ることがどういうことか……」
「分かっているよ。ルビーのためにすることに抜かりはないさ」
「トレーナーさん……」
「前にルビーに教えてもらったフルーツパーラーに誘ってお礼を……っ!!だから早いって!」
直前の速球を更に上回る豪速球がトレーナーの構えた……というより、盾にしたキャッチャーミットに突き刺さった
溢れ出る激情はダイイチルビーらしさを通り越し、レースの時の気迫すら上回るほどである
「……いかがでしたか。私の華麗さの象徴たるスピードがまだ足りないと仰るならば……」
「スピードはレースで表現しよう!」
「では、そのように。ところで始球式の後、30分ほどスケジュールに余裕があるのですが……」
「俺たちもフルーツパーラーでお茶しよう!予約は入れておくから!」
「かしこまりました。楽しみにしていますね」
そう言ってダイイチルビーは彼女らしからぬ……
否。トレーナーにとってはようやく見慣れた、年相応の笑みを浮かべるのであった
11: 名無しさん(仮) 2023/03/12(日)20:58:44
>>3
>「メジロ家といえば私たち一族に勝るとも劣らない名家。彼女らに借りを作ることがどういうことか……」
私たち…?
15: 名無しさん(仮) 2023/03/12(日)21:05:53
>>11
何か問題でも?
17: 名無しさん(仮) 2023/03/12(日)21:08:59
>>15
早いよルビー!
34: 名無しさん(仮) 2023/03/12(日)21:38:27
>>11
二人でダイイチルビーだから何も問題がない