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【ウマ娘怪文書】ほんの出来心だったんです。同室のアドマイヤベガさん。彼女の一言が切っ掛けだったんです。「最近、トレーナーさんのことを考えると胸が苦しいのよ…」


1: 名無しさん(仮) 2023/03/01(水)23:16:42

ほんの出来心だったんです。同室のアドマイヤベガさん。彼女の一言が切っ掛けだったんです。
「最近、トレーナーさんのことを考えると胸が苦しいのよ…」
おやおや?当のアヤベさんは何気なく零した一言。彼女はそれを失言だと思ったのか、即座に「忘れてちょうだい」なんて言ってるけど、カレンは今のを聞き逃すほどファル子さんのトレーナーさんじゃない。
「アヤベさん!それって恋ですよ!」
アヤベさんはとっても大変な人で、ちょっと変な人。詳細は省くけど、宿命を背負ってトレーナーさんと三年間頑張って、ようやく色んなしがらみから解放された。そうしてやっと、彼女自身のウマ生を謳歌出来るようになった今、不意に漏らした彼女の恋心。応援してあげたいと思うのは妹分として当然のことで。
「恋?そんなはずないわ、私があの人のことを…」
「じゃあ、嫌いなんですか?」
「嫌いとは言ってないじゃない。ただ、私とあの人が恋仲になるのが有り得ないと言っただけよ。あんなお節介で、デリカシーが無くて、そのくせ心配性で繊細な人を好きになるなんてあるはずないわ」
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2: 名無しさん(仮) 2023/03/01(水)23:17:40

「そうそうお節介焼き。困ってるとすぐ助けてくれるから、密かに人気なんですよアヤベさんのトレーナーさん。この前もデビュー前の子達の悩みを聞いてあげてて」
「………」
「今私のトレーナーさんなのに…って考えてたでしょ?」
「考えてないわ」
「嘘、お耳は正直ですよー」
キュッと絞られたアヤベさんの耳を見て、自分の直感は正しいことを悟る。やっぱり、アヤベさんはトレーナーさんのことが好きなんだ。
「告白とかしないんですか?」
「……仮に、仮によ?もし本当に私が彼を好きだったとしても、彼が私を好きになることが有り得ないわ」
「えー、脈アリだと思うんだけどなー」
「そんなわけないじゃない。出会ってからずっと、彼には冷たい態度を取ってきたわ。私のことを心配して、気にかけてくれた彼に。そんな可愛げのない女、好かれるはずないじゃない」
うーん、自己肯定感が低いのは相変わらずか。余計何とかしてあげたい。どうにかして背中を押してあげたい。何かないか……あ、そうだ。
「アヤベさん知ってます?図書館に恋愛の指南書が入荷されたの」
「…?ああ、だいぶ話題になってたわね。ドトウやトップロードさんも言ってた気がするわ」




3: 名無しさん(仮) 2023/03/01(水)23:18:12

「それですよそれ!読めばトレーナーさんに好かれる方法、何か分かるんじゃないですか?」
カレンも詳細は知らないけど、あの本のおかげで恋が成就したって話は学園でよく聞く。もしかしたらアヤベさんの力になってくれるかもしれない。
「いや、私は別に好かれたいわけじゃ…」
「じゃあトレーナーさんが他の子に盗られてもいいんですね?」
「…………」
「はいはーい、とやかく言わないで取り敢えず行動に移してみましょー。借りてきて読んでみましょう、ね?」

というわけで借りてきた件の本。その名も“奥手な殿方も一発差し切り!恋のレースの極意"
書いたのはキングヘイローさんのお母さん。とってもすごい実績を残した競走ウマ娘にして、現役中に自分のトレーナーと結ばれて、それどころか赤ちゃんを授かって、そのままレースに出走した人。現役中に、っていうのはカワイくないけど、それはそれとして本の信ぴょう性は高そう。アヤベさんの力になってくれるといいんだけど。
なんて、気軽に勧めたのが良くなかった。
「な、なにコレ…」





4: 名無しさん(仮) 2023/03/01(水)23:19:05

そこに書いてあったのは惚気と過激な技法の数々。えっちな格好をして、身体的接触をして、耳元で愛を囁けだなんて。強引過ぎてカワイさを欠片も感じない。百歩譲って、それだけならまだいいんだけど、最終手段として逆ぴょいを勧めてくるものだからビックリした。
「こんなのカワイくなーい!ごめんね、アヤベさん…あんまり参考になりそうにないかも…」
ところが、一緒に読んでいたアヤベさんは終始無言。時折ふむ、と何か考えるような仕草をして……
「完璧に理解したわ」
「へ…?あの、アヤベさん…?」
「ありがとう、カレンさん。切っ掛けをくれて。もう大丈夫よ」
何が大丈夫なのだろう…そんなカレンの心配を他所に、アヤベさんは据わった目で笑っていた。

〜数日後〜
「聞いてカレンさん。あの人と交際することになったの」
え、そんなまさか。本当にあの本を実践したの?あのアヤベさんが?
にわかに信じ難いけど、ま、いっか。アヤベさんの想いが通じて。
「おめでとうアヤベさん。お幸せにね」
「ありがとうカレンさん。キスなんて初めてしたけど、中々どうして、刺激的ね」
「んんん」




5: 名無しさん(仮) 2023/03/01(水)23:19:43

そっか、あの本を参考にして結ばれたってことは、アヤベさんはあの本の過激なあれやこれを実践したということ。言うなれば今のアヤベさんはスケベさんというわけだ。
「カレンさん、貴方はまだシたことないの?」
しかもマウント取ってきた。
「カレンとお兄ちゃんはまだそういうの早いかなって…」
「そうやって先延ばしにしてるといつか盗られちゃうわよ。早くした方がいいわ」
似たようなこと言って焚き付けたから否定しづらい。
「き、気持ちだけ受け取っておきまーす…カレンはカレンで頑張るから…」
「そう…他の娘に盗られないよう注意なさい」
うん、幸せなのはいいことだけどあんまり長いこと話してるとカレンが被害を被る気がする。干渉するのはここまでにしておこっと。

〜次の日〜
「聞いてカレンさん。あの人と星を見に行ったんだけど、この時期は流石に寒いじゃない?だから大きめの毛布を用意して二人でくるまって…初めてだったわ。星に全く集中出来なかったの…」




6: 名無しさん(仮) 2023/03/01(水)23:20:25

〜三日後〜
「聞いてカレンさん。あの人ったらまた他の娘の指導をしてたのよ。それが仕事とはいえ契約してない娘の面倒まで見ることないじゃない?それでちょっと注意しようと思って後ろから抱き着いたの。騒ぎは大きくなっちゃったけどあの人も自分が誰のトレーナーか分かってくれたと思う」

〜五日後〜
「聞いてカレンさん。あの人と寝た時の話なんだけれど、日頃からストレスも溜まっているんでしょうね。無意識に身体を預けて来て…毎日私のために頑張ってくれてるあの人に少しでも安心してほしくてそのまま抱き締めたの。幸せそうな寝顔を見てたら私まで幸せになったわ…」

〜一週間後〜
「もう我慢の限界ッ!」
向こうから干渉してくる!アヤベさんの幸せを願いはしたがお裾分けという名の惚気は望んでない!それもこれもあの本のせいだ!本を勧めたのはカレンの落ち度だけど書いた人への怒りが八つ当たり気味に湧いてくる。でも書いた人と会ったことないから文句を言おうにも言えない。娘さんにでも言ってやろうか、貴方のお母さん何なんですかって。
いけないいけない。そんなカワイくないことよりも、現状をどうにかする方法を考えないと。




7: 名無しさん(仮) 2023/03/01(水)23:21:02

こういう時はパートナーに注意してもらうのが一番。つまり……
「アヤベの惚気を止めてほしい?」
アヤベさんのトレーナーさんに直談判しに行くことにした。
「そうなんですよ。毎日毎日ことあるごとにトレーナーさんと何々したとかトレーナーさんのこんなところが可愛いとかかっこいいとか…」
「えっ、そんなに俺のことを…?」
「んんん」
何ちょっと嬉しそうにしてるんですか。何ちょっと嬉しそうにしてるんですか。止めてってお願いしてるのにこっちは!
「しかしだな…あのアヤベが幸せそうにしてるのを見ると俺も注意しづらいというか…」
「それはそうかもしれないですけどぉ…」
「それに、な?」
「…?何ですか」
「幸せそうに甘えてくるアヤベめっちゃ可愛い」
「んんん!」




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