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【ウマ娘怪文書】ダートウマ娘は婚期が遅い。誰が最初に言い始めたのかは定かではないが、ウマ娘達の間ではそんな風説が広がっていた


1: 名無しさん(仮) 2023/01/08(日)17:01:00

ダートウマ娘は婚期が遅い。
誰が最初に言い始めたのかは定かではないが、ウマ娘達の間ではそんな風説が広がっていた。
実際にそういった側面がないこともない。芝を主戦としているウマ娘に比べてダートを走るウマ娘は現役が長く、色恋沙汰に出遅れるケースが散見されている。
さらにこの与太話の信憑性を高めているのはスマートファルコンの存在である。ダートの人気を牽引した彼女にそういった浮ついた噂がないため、「あの人がいるからまだ私は大丈夫だよねー」などといった一種の慰めというか、根拠のない安心感がダート界に蔓延していた──
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2: 名無しさん(仮) 2023/01/08(日)17:02:28

「──ファル子さん、すっごくキラキラしてたねぇ」
「そ、そうだね! ね、タルマエ!」
「う、うん!……苫小牧のイルミネーションに負けないくらい綺麗だった」

──スマートファルコン、電撃結婚。お相手はやっぱりファン一号。
そのビッグニュースは瞬く間に業界を駆け巡り、彼女の引退ウェディングライブは東京ドームの席を埋め尽くすに至った。更には突如として正体不明の飛行物体や流星群が星空を駆け巡り、その他にも原因不明の異常気象が各地で見受けられ、『三兆人の宇宙人がファル子のお祝いに駆け付けた』のだなどと宣うオカルト誌まで発行された。
それだけの衝撃を業界に与えたスマートファルコンの結婚式──その帰り道、ニコニコ笑い並んで帰路に着くのはワンダーアキュート、コパノリッキー、ホッコーマルマエの三人組。

「あたしもあんな風にキラキラしたいねぇ……」

ポツリ、とアキュートが零した呟きにピクリと背筋と尻尾を振るわせる二人。
リッキーとタルマエ──何を隠そうこの二人も、『あの人がいるから私はまだ大丈夫』と油断しきっていたのであった。




3: 名無しさん(仮) 2023/01/08(日)17:03:19

二人とも──三人ともお相手がいないわけではない。トレーナー相手に確かな気持ちを抱いている。
リッキーは暇があれば二人で住むにあたって風水的に良い間取りの部屋を探しているし、タルマエにはいざとなればスペシャルウィークやユキノビジンといった『田舎育ちの先輩達』から学んだ手法がある。
だが、何というかそういうのはやっぱりトレーナーの方から切り出してほしい──という乙女心が後一歩を踏み出すのを躊躇わせていた。

「……アキュートさんもトレーナーさんと良い感じでしたよね?」
「あたしはいつまでも待てるよぉ? トレーナーさんに整理がつくまで」
「そ、そうですか……」

ここでアキュートに話題を振ったのはタルマエ。もう一人身近に結婚を迎えたウマ娘がいれば、トレーナーも決心してくれるのではないか──そう目論んだが失敗。アキュートには焦りのあの字も無い。伊達に長くトレーナーと寄り添っているわけではないのだ。
スマートファルコンを祝う気持ちはあれど、どこか心の隅に釈然としないものを抱えてタルマエとリッキーは帰宅した。





4: 名無しさん(仮) 2023/01/08(日)17:04:12

──後日。

「あ、ごめんなさ……ってリッキー?」
「タルマエも……もしかして、これを?」
「え、えっと……いやいや、そんな……ねぇ? こういうのは、北海道の大地みたいにしっかり耕していかないと……というかリッキー、もしかしてそのつもり……?」
「え、ええっと……」

本屋でバッタリと出会したリッキーとタルマエ。二人が同時に手を伸ばしていた本は、つい先日キングヘイローの母親が出したもの。意中のあの人にアピールするにあたって少々過激な手段について事細かに記載されているその本は、トレセン学園の生徒達にも話題となっていた。
二人とも、相手から求めてきてほしいという乙女心はあれどそれはそれ。魔がさすことはある。

「あれま。奇遇だねぇ」
「あ、アキュートさ──」「──ん?」

そんな風に二人が固まってるところに声をかけたのはアキュート。
二人は揃ってアキュートに振り返り──




5: 名無しさん(仮) 2023/01/08(日)17:04:49

「あ、あの……アキュートさん、それ……は?」
「あ……ありゃま。外すの忘れてた……みんなにはまだ内緒のつもりだったんだけどねぇ……」

アキュートの左手薬指に燦然と煌めく銀の指輪。リッキーとタルマエは揃って言葉を失うしかない。

「トレーナーさん、そういうのはもっと自分に誇れる自分になってから申し込むって……だから今はこれで……ってねぇ」
「そ、そうでしたか……」
「お、おめでとうございます……!」

てれてれと頬を真っ赤にするアキュート。ダートの先輩は遥か先を言っていた。その事実にリッキーとタルマエの胸中はお祝いと驚きが半々で満たされる。

「アキュートー」
「あ、じゃあまたねぇ」

遠くからアキュートを呼ぶトレーナーの声。ぺこりと小さく頭を下げて、アキュートは小走りで去っていった。




6: 名無しさん(仮) 2023/01/08(日)17:05:30

置いてけぼりにされた二人の間を沈黙が満たす。
何となくだが、二人の間には予感があった。あと数年後くらいにアキュートのトレーナーは新しい教え子にGⅠを勝たせるのだろう。多分宝塚記念辺りを勝たせるだろう。そして胸を張ってアキュートに結婚を申し込んだりするのだろう、と。
果たしてそれまでに、自分達はどうなっているのだろうと──

「……」
「……」

リッキーとタルマエは二人揃って手を伸ばす。その先にある本は言うまでもなく。
『ダートウマ娘は婚期が遅い』という風説が、『ダートウマ娘は逆ぴょい推奨』になるまで、そう時間はかからないのかもしれない──




12: 名無しさん(仮) 2023/01/08(日)17:09:44

>>6
>多分宝塚記念辺りを勝たせるだろう。
なんかえらく具体的で駄目だった




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