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【ウマ娘怪文書】ある日、というかバレンタイン前日の食堂にて。キングヘイローが虚空を見つめていた。それはもう明らかに不調ですといった顔で、口を半開きにしてぼんやりと虚空を見つめていた


1: 名無しさん(仮) 2023/02/14(火)23:02:18

ある日、というかバレンタイン前日の食堂にて。キングヘイローが虚空を見つめていた。それはもう明らかに不調ですといった顔で、口を半開きにしてぼんやりと虚空を見つめていた。発見したスペシャルウィーク、心配になって話しかけに行く。
「大丈夫、キングちゃん…?」
「…ああ、スペさん。大丈夫よ、ちょっとぼんやりしてただけ」
「またお母さんのことで何か揉めたの…?」
「違うのよ、今回ばかりはお母様に非は3割くらいしかないの。私が色々余計なこと考えちゃうのが悪いのよ」
「3割は悪いんだ…じゃなくて。何か悩み事?」
「あれを見て」
「あれ?……何かセイちゃんが変だね」
指さす先を見てみると、セイウンスカイが何やら悶えていた。テーブルをバンバン叩いたかと思えばうずくまったりその場でクネクネと身を捩らせたり、正気に戻って顔を真っ赤にして項垂れたり、見ていてちょっと怖かった
「どうしちゃったの?」
「明日ってバレンタインじゃない?私もスカイさんも自分のトレーナーに渡すつもりだったんだけど、スカイさんったら特大のハートチョコを調子に乗って作っちゃったのよ」
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2: 名無しさん(仮) 2023/02/14(火)23:02:50

「いいんじゃない?いっぱい食べられるし、愛情もいっぱいこもってそうだし」
「それよ。調子乗って作ったはいいけどこんな大きなサイズのハートのチョコ渡したら私が大好きみたいじゃん作り直そうかな、でもあわよくば私の気持ちに気付いてほしい…そんな思考のループに陥った成れの果てがあれよ」
「はあ…」
相変わらず難儀な子だ、とスペは思わずため息が漏れた。
「ところで、セイちゃんがおかしくなっちゃったのと、キングちゃんが元気が無かったこと、何の関係があるの?」
「いや、ね?スカイさんのあの悩み様を見ていたら、私もちょっと分からなくなっちゃって。手作りチョコを贈りたいと思ったはいいけど、それで本当に私の想いは伝わるのかなって。料理だって得意じゃないから味も見た目も当然、市販のものの方が優れてるに決まってる。これで私の好きは伝わるのかしら…」
「考え過ぎじゃない?」
悩みはしても好きと思ったなら取り敢えず好きと伝える。そんなストロングスタイルなスペとしては友人達はちょっと思い詰め過ぎな気がした。
「それでね、身近な人の恋愛を参考にしてみようと思ったらお母様が思い浮かんできて」
「お母さんが?」




3: 名無しさん(仮) 2023/02/14(火)23:03:28

「どうやってお父様にチョコを渡してたかなって記憶を辿ってみたら、目の毒だったのよ」
「ああ、何となく察した」
キングの母親は優秀な元競走ウマ娘。と同時に現役中に想い人であるトレーナーをオトし、それどころかその子を孕んでレースに出走したという逸話も持つ程の恋愛強者。そんな人だから、夫婦になってもその情愛は強かった。そしてそんな人の娘はそれを毎年見せつけられていた。
「毎年飽きもせずイチャイチャイチャイチャと…幼い頃はお父様とお母様が仲良しで嬉しいー!くらいの感情だったけれど、段々とね…娘の前で何やってるのよ!って気持ちが強くなってきて…」
「チューまで行ってた?」
「バッチリ行ってたわ。多分深い方」
「なるほど。思い出してダメージ受けてたんだね」
「でもいいの。参考にしてやればプラマイゼロよ」
「変なところでポジティブ…じゃなくて。チューする気?」
「チューはしないわ。お母様が毎年手作りチョコを渡してたのを思い出したのよ。あの人も料理苦手なのに毎年頑張ってたわ。なら私も、想いを伝えるには手作りがいいかなって」
「うんうん、それがいいよ!」





4: 名無しさん(仮) 2023/02/14(火)23:04:26

そうと決まればと、準備に入ろうとするキング。その時、脳内に不思議な声が!
(娘よ…愚かなる我が娘よ…本当にそれでいいのかしら?)
「…!この声は…!邪悪なるお母様!?」
「なんて?」
「私の心の弱さにつけこもうとしてくる邪なる存在よ!もう走るの辞めちゃおうかなとか、スペさん達には勝てっこないとか、トレーナー押し倒しちゃおうかなとか、私の心の弱さの象徴よ」
「うん、なんて?」
悪魔の囁き的なアレである。
(娘よ…覚えているかしら?私が何度か、市販のチョコを贈ったことがあるのを)
「そういえば…でもその年って忙しかったとかじゃ…」
(違うわ。あれは策よ。毎年貰えていたものが突然貰えなくなるのは誰しも不安に思うもの。それで相手をかからせて向こうから求めてくるように仕向ける1つの手法ね)
「向こうから…」
(あの年は凄かったわ…不安に思ったあの人…お父様ね?貴方が眠った後遠回しに質問してきたのよ。今年はいつもと違うの?って。はぐらかしてたら見事にかかって…逆ぴょい以外もたまにはいいわね)
「トレーナーも…かかって…決めたわスペさん。私、市販のチョコを贈る」
「突然どうしたのキングちゃん!?」




5: 名無しさん(仮) 2023/02/14(火)23:05:09

親友がブツブツ呟き出したと思ったら突然心変わりした。奥の方でビタンビタンと跳ねているセイウンスカイとのコンボでかなり不気味だった。
「そうと決まれば早速デパートに…」
(お待ちなさい愛しき我が子よ…本当にそれでいいのかしら?)
「その声は…!聖なるお母様!?」
天使の囁き的なアレである。
(その手法は長年手作りチョコを贈るから成立するもの…貴方がやるにはまだ早いのです…今年は手作りチョコを贈りましょう…)
「でもトレーナーから来てほしくて…」
(焦りは禁物です。相手から来てほしいというのなら、まずは自分の想いをちゃんと伝えることから始めましょう…大丈夫、想いは積み重なるもの。毎年一緒にいて、毎年重ねていけば、いつか貴方も出来ますよ)
「…決めたわ。やっぱり手作りを贈る」
「そのブツブツ呟くの怖いからやめてくれないかな?」
(待って!キング!)
「その声は…!性なるお母様!?」
「全部性なるお母様じゃない?」
(バレンタインは全身にチョコレートを纏って私を食べて❤ってやるのがベターよー!)
そんなお母様達に翻弄され続けたキングは…




6: 名無しさん(仮) 2023/02/14(火)23:05:44

「どうしたら…私の好きは伝わるのかしらね…」
「振り出しに戻ってる!」
口を半開きにして虚空を見つめていた。
「もう本物のお母さんに聞いた方がよくない?」
「えー、でもあの人に自分から電話するのはちょっと…」
あれだけ自分で作り出した架空の母親に振り回されて何言ってるんだ、とツッコミを入れたかったが我慢した。
「ほら、せっかく仲直り出来たんだしさ!頼れる時は頼りなよ!」
「えー…」
無理矢理電話をかけさせた。二、三度のコール音ですぐ繋がった。
『もしもし?』
「あ、お母様…その…今大丈夫かしら?」
『大丈夫よ。何かあったのかしら?』
「実は…」




7: 名無しさん(仮) 2023/02/14(火)23:06:36

『なるほど、そういうことね』
「私はどうしたらいいのかしら…」
『私から言うことは何もないわ』
「そんな…少しくらいアドバイスをくれてもいいんじゃないかしら…」
『私の背を追うのは止めたんじゃなかったの?』
「あ…」
『私とお父様の愛と、貴方とトレーナーの愛は別物よ。私達の模倣をしても上手くいくはずがない。貴方は貴方のやり方で、彼に愛を伝えなさい。手作りには手作りの、市販には市販の良さがあるわ。よく考えることね』
「お母様…」
『大丈夫よ。私に道を示した貴方だもの。きっと彼に愛を示すことだって出来るわ。それと、貴方のことだから自発的に私に電話をかけてくることもないでしょうね。スペシャルウィークさん?セイウンスカイさん?それとも他の誰かにせよ、一緒に悩んでくれる友達がいるのなら大事になさい。こういうイベントで友達と一喜一憂するのも、大事なことなのだから』




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