ぼっち「あ、あのみなさん、新曲の歌詞…、描いてきました」リョウ「『あのバンド』…?」
1: 2023/01/25(水) 00:11:31.79 ID:vrIrkvRg0
リョウ「シンプルな題名にしてきたね」
虹夏「ぼっちちゃん。また目の下にクマが…」
喜多「大丈夫?後藤さん」
ぼっち「す、すみません、こ、今回も詞を書いてたら寝るのを忘れてしまって…」
虹夏「ぼっちちゃん、今回の歌詞もすごくいいよ。歌詞書くのうまいよね、
こんな言葉、わたしのボキャブラリーからはでないよ」
喜多「私もです、あ、わたし、ここのフレーズ好きですよ」
ぼっち「あ、あありがとうございます…ふへへへ」
リョウ「……」
ぼっち「………、あ、あの…リョウさんはどうですか?」
リョウ「…、ああ。今回も全体に歌詞が暗めだね。けど、今回の歌詞も
少ないかもしれないけど誰かに深く刺さるんじゃないかな」
ぼっち「そ、そうですか…ありがとうございます、うへへ」
リョウ「帰ってからじっくり見てみる。この歌詞に合う
曲を考えてみるよ」
虹夏「たのんだよーリョウ」
2: 2023/01/25(水) 00:11:50.16 ID:vrIrkvRg0
リョウの家
リョウ「(ぼっちはホントに歌詞書くのうまいな…)」
リョウ「(前回の曲もぼっちの歌詞みてたら、結構すぐ曲が浮かんで
きたし、今回もすぐできそう…、ぼっちと私、愛称いいのかもな)」
リョウ「それにしても、こんな尖った歌詞、あのぼっちが書いたなんて
信じられない、ここのフレーズなんてすごく…、ん?あれ…なんだろう」
リョウ「…この歌詞みてたら、ちょっとだけ昔のこと思い出しちゃったな」
3: 2023/01/25(水) 00:12:41.81 ID:vrIrkvRg0
とあるライブハウス
バンドメンバー1「バンドをやめるって、本気で言ってるのリョウ!?」
リョウ「うん、ごめん」
バンドメンバー2「なんでよ、中学のころからずっと一緒にやってきたじゃん、いまさらなんで」
リョウ「…もう、わたしはこういう曲作りたくないし、演奏もしたくない。
こういう売れ線狙った曲じゃなくて…、わたしはこのバンドのもっと昔の曲が好きだったんだ」
バンドメンバー3「何それ、昔の曲って…、そんな曲でライブしてたってこれまで
10人も集まらなかったのに…、今の路線に変えてからお客さんもものすごく増えてきたじゃない」
バンドメンバー1「そうだよ、もうライブハウスのノルマなんて余裕だし、このまま行ったらレーベルに声かける
可能性だってあるかもなのにっ」
バンドメンバー2「それに今の路線のほうがお客さんだってあんなに喜んでくれてる、前のバンドの路線じゃこんなこと
全然」
リョウ「けどっ…、個性はなくなった!これはただ人気バンドの曲をまねてるだけで、このバンドの個性なんて何もないっ、
個性捨てたら死んでるのと一緒だよっ」
バンドメンバー1「…はあ、もういいよ。リョウは変人だもんね。自分でそう言ってるし、私たちとは音楽的な才能も
感性も全然レベルが違うから仕方ないね」
バンドメンバー2「そうだね、わたしらは、リョウみたいに楽器も歌もうまくないし、お客さんに寄り添わなきゃ、
うえになんていけないよ」
バンドメンバー3「あーあ、そっか、こういうのが、『音楽性の違い』
ってやつなんだ。これまでありがとう。じゃあねリョウ」
リョウ「…」
4: 2023/01/25(水) 00:13:05.23 ID:vrIrkvRg0
駅の踏切
リョウ「(これで…いいんだ。わたしは、自分のやりたい音楽をやっていきたい)」
リョウ「(まあ、言う通り変人だしね…、理解してくれる人なんてそういない…)」
リョウ「……」
リョウ「(…ただ、それでも…、長く付き合ってきたみんなの気持ちに、これっぽっちも
寄り添えないこと、一体になれないことに負い目だって、ずっと感じてきた…)」
リョウ「(あれ、それならやっぱり、変人のわたしが少しは寄り添うべきだった…?)」
リョウ「わたしの…選択…、間違ったのかな…?」
リョウ「…」
……
虹夏『あれーリョウから連絡あるなんて珍しいね』
リョウ「そうだっけ?なんか、急に誰かと話してみたくなって、…ぐす」
虹夏『ええ、なにそれ、らしくないじゃん。あれ、リョウひょっとして…、ううんなんでもない』
虹夏『リョウ、ウチ来る?久しぶりに一緒にごはんたべよーよ』
リョウ「………、行く」
5: 2023/01/25(水) 00:13:39.61 ID:vrIrkvRg0
………
リョウ「『目を開ける孤独の称号、受け止める孤高の衝動…』」
リョウ「ここ良いな…、かっこいいね、うん。ほかのフレーズも…
なんとなくイントネーションがわいてきたな。郁代とぼっちもいるし、コードはシンプル目に…
けどエネルギッシュな曲調にしよう。それでいて…」
リョウ「……、あれ…?」
リョウ「なんでわたし、泣いてるんだろ…?」
リョウ「ああ、そうか…なんだ、刺さってたのか」
『誰かに深く刺さるんじゃないかな』
リョウ「はは、誰か、ってなんだよ…、ぼっちの歌詞に刺さってるのわたしじゃん…ぐすっ…」
6: 2023/01/25(水) 00:14:20.36 ID:vrIrkvRg0
……
リョウ「そういえばわたし、以前ぼっちに前のバンドでの話、少し話したことあったっけ…」
リョウ「……、」
……
翌日 スターリー
リョウ「『あのバンド』、曲つくってきたよ」
虹夏「うおー、今回はすごく早かったねーリョウ。それにすごい
かっこいい曲じゃん」
喜多「それに歌いやすくて弾きやすそうで、わたし向きかも」
ぼっち「(リョウさんすごい…、わたしのつくった歌詞のイメージを
組んだメロディーはめ込んできてくれてる…)」
リョウ「ぼっち」
ぼっち「え?」
9: 2023/01/25(水) 00:15:17.42 ID:vrIrkvRg0
リョウ「その、今さらだけど、この曲の歌詞ってどういうことイメージしてかいたの?」
ぼっち「えっ!?こ、これはそのっ…、き、聴いてると胃酸があがってくるような
青春コンプレックスを刺激する曲ばかり書くバンドに対する
思いをぶちまけてみたというか…ふへへ」
虹夏「お、おおう…うすうす感づいていたけど今回もぼっちちゃんの
こころの闇に触れた歌詞だったんだやっぱり…」
喜多「どうしよう…、全然理解できない…、わたし後藤さんの気持ち
うまく代弁して歌えるかしら…」
ぼっち「あとは…その…、………、いえ…なんでも」
リョウ「……、そっか」