佐々木「僕はキミに安心感を与える置物じゃない」キョン「そんなつもりは……」 (15)(完)
8:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2023/01/07(土) 23:04:36.47:l/iL5hNWO (8/13)
「待っててやるからその辺でしてこいよ」
「で、出来るわけないだろう!?」
ふむ。そうか。それならば、仕方がないな。
「じゃあ、俺も付き合ってやるよ」
「え?」
「思えば、これが初めての連れションだな」
嬉しくなって笑うと何故か赤面する佐々木。
「な、何を言ってるんだよ……もぅ」
「なんだ、もう漏れちまったのか?」
「そ、そんなわけないだろう!?」
「じゃあ、行こうぜ」
「……ぁ」
佐々木の手を取って立ちション場所を探す。
近所の一級河川にかかる橋の橋脚が良さそうだ。あそこまでならきっと間に合うだろう。
「……キョン」
「ん? 無理そうか?」
「そうじゃなくて、手」
「ああ……今は非常事態だからな」
「それじゃあ……仕方ないね」
「仕方ないな」
くつくつと笑う佐々木に釣られて俺も笑う。
9:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2023/01/07(土) 23:06:29.31:l/iL5hNWO (9/13)
「さて、佐々木」
「はい」
佐々木も緊張してるのか敬語だ。俺も敬語にするべきだろうか。いやここはあくまでも気安くいこう。そうしたほうが放尿しやすい。
「出来れば向かい合って用を足したいのは山々なんだがそれは残念ながら無理らしい」
「そうだね。お互いにかかっちゃうね」
だから隣同士にしようかとも思ったんだがそれはいくらなんでも風情に欠ける。そこで俺は閃いた。閃いちまった。橋脚を見上げて。
「背中合わせってのはどうだ?」
「もしかして格好つけてるつもり?」
うるせえ。そういう年頃なんだよ中学生は。
「なるほど背中合わせね。つまり僕らはお互いの背中を背もたれにしてするわけか。それはなんとも風情があって絵になる光景だね」
からかう佐々木に取り合わずしゃがみ込む。
「では失礼するよ、キョン」
そう断って、何故か背中に抱きついてきた。
「佐々木……?」
「ちょうど良い背中があったもので、つい」
「そうかよ。じゃあ、掴まってろよ」
「え? あ、ちょっと、キョン!?」
後ろ手を回してそのまま背負い立ち上がる。
10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2023/01/07(土) 23:09:19.28:l/iL5hNWO (10/13)
「お、下ろして! 下ろしてよ!?」
「ちょっと待ってろ。先に用を足すから」
「なんで!? ひとりだけずるいよ!」
たしにそうだな。それだとフェアじゃない。
「お前もしていいぞ」
「していいって、おんぶされてるのに……」
「だってほら、今なら叶えられるだろ。俺の望みもお前の望みもさ」
「キョン……」
人間関係なんてものは結局、どこを目指しているかに左右される。方向性の問題なのだ。
お互いに同じ方向に向かっている今ならば。
「一緒に高校は通えないかも知れないけどよ、それでもこうして今この瞬間、一緒に小便することは出来る。それがずっと先のより良い未来に繋がることはないかも知れないがそれだけが全てじゃないと、俺はそう思う」
未来なんざ一寸先も真っ暗闇だ。必ずしも、素晴らしい未来が待っているわけではない。辛いことや苦しいこともあるかも知れない。
「愉しかった昨日で救われる今日もある」
「うん……そうだね」
「愉しかった今日で救われる明日もある」
「うん……キョン、キミが正しい」
俺が佐々木を完全論破するような日もある。
11:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2023/01/07(土) 23:11:54.29:l/iL5hNWO (11/13)
「キョン」
「そろそろ限界なんだが?」
「すぐに済むから我慢して」
いそいそとズボンを下ろしつつ耳を傾ける。
「キミが変化を望まないように僕も今の関係を壊すことは望むところではない。けれど僕は変化のために現状を打破するしかないとの結論に至った。でもそれは間違いだった。関係性を維持したまま、変化する未来もある」
俺と佐々木は友達。友達に頬にキスされた。
「佐々木、お前……」
「勘違いしないでくれたまえよ」
「ああ……わかった」
勘違いするなと言われたら考えなくていい。
「おっとすまん、佐々木」
「なんだい、キョン」
「びっくりしたら出ちまった」
「キョン……キミって奴は」
「フハッ!」
ちょろりんっ!
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「やれやれ……風情もへったくれもないね」
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
呆れつつもチョロチョロと俺の背中を濡らす佐々木のおしっこに歓喜しながら放物線を描く俺の尿。愉悦は橋の上を通る列車の音でかき消された。
12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2023/01/07(土) 23:13:41.14:l/iL5hNWO (12/13)
「ふぅ……さて、帰るか」
「おんぶしたまま?」
「ああ、すまん。今、下ろす」
背中から下ろした佐々木の頬に手を伸ばし。
「実は塾の時からしたかったんだよ」
「したかったって。おしっこのこと?」
「いや、ほっぺにキスをだな……」
「へ、へえ……それは知らなかった」
そう白状すると、目を丸くして頬を染めて。
「僕はこういう性格だから自分の願望を素直に口にすることは難しい。何故ならば、それがキミにとって望ましくないのではないかと考えてしまうからだ。なのでキミが自分から申し出てくれたなら僕もついつい期待してしまう。キョン、今からでも遅くはないよ?」
時既に遅しという言葉はきっと正しくない。
起こり得ない未来とはそもそも存在しておらず可能性はゼロである。今の状況とは違う。
「いや、より良い未来にとっておくさ」
「やれやれ……なに言ってんのさ、もぅ」
それはお互いにとって望む未来だろうから。
【佐々木とキョンの期待】
FIN
13:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2023/01/07(土) 23:16:10.17:l/iL5hNWO (13/13)
あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします。
最後までお読みくださりありがとうございました!
14:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2023/01/07(土) 23:22:01.69:sQfvfsSC0 (1/1)
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森きのこ、えすえすログは2アウトらしいので注意してくださいね